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コロナ以降顕在化した老舗飲食店の事業承継問題と解決策について

飲食-事業承継-解決策

Tumisu @ Pixabay

コロナで飲食店が営業時間制限を受ける前から飲食店業界を含め、産業界全体で問題となっていたのが人手不足でした。実はこれと同じぐらい問題となっていたことがありました。

事業承継問題です。

特に中小企業に限っては、廃業率が開業率を上回る状態がコロナ前から何年も続いています。つまり年々その数を減らしていることになります。

廃業を決めた経営者にその理由を尋ねてみると、「需要が頭打ち」、「同業者との競争が激しい」「後継者がいない」が真っ先に上がります。

もう一つの傾向として、事業体の規模が小さくなるほど後継者や事業継承についての危機意識が低いとの調査結果も出ています。

今回は、個人事業主が大半の飲食店業界において、事業承継をどの様にしてゆくのか解決策を含め考えます。

Contents

「経営承継円滑化法」平成27年1月の法改正

実態は個人経営であっても会社組織で運営されている飲食店は数多くあります。そんな中小企業の事業承継に焦点をあてた法改正が平成27年に行われています。今一度振り返ってみましょう。

大きな特徴として、それまで後継者は、現経営者の親族に限定されていた「経営承継円滑化法」は、親族に限らず適任者を後継者にするとを認めると改められたのです。

この経営承継円滑化法をおさらいします。

相続税・贈与税の納税猶予制度

後継者が、相続により非上場会社である自社株を取得した場合、既に取得している議決株式を含め発行済議決権株式総数の3分の2に達するまでの部分については、課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されるというものです。もしそれが適任者ということであれば、贈与税が課税価格の3分の2に達するまでの部分がこちらは全額猶予されることとなっています。

但し要件が新たに増えています。

  • 後継者が代表であること
  • 相続又は贈与により取得した自社株について継続して保有する
  • 雇用(従業員)の8割を5年間で平均して維持する
  • 上場会社もしくは資産管理会社等に該当しない

【保存版】 飲食店舗閉店・廃業の実務で必ずやるべき「届出」と「手続き」

個人事業主の事業継承

飲食店を個人で営んでこられた経営者にとっての事業承継を考えます。大きな分け方で2通りの方法があります。

 業務委託型

一般的に賃貸で飲食店を経営している場合、その賃借人としての地位を保ったままであればこの委託型になります。

方法はいくつもありますがオーソドックスな方法をご紹介します。賃借名義はそのままに飲食店の経営実態をお弟子さんや親族または第三者に委託します。現経営者は事実上の引退です。

まず最初に業務委託用の銀行口座を開設し現経営者も新経営者も出納がチェックできるようなホームバンキング形式にします。

その上で、支払、売上をこの口座を通じてガラス張りとし、新経営者は現経営者に月々定額か若しくは売上高や利益に応じた金額を毎月支払うことにするのです。

なぜこんな面倒なことをするのかというと、ただ単にお店を任せて月々決まった額を現経営者が手に入れていたとすると転貸借だと判断される恐れがあるからです。

実際にこのことを理由に即時解約を裁判所から言い渡された事例もあります。

 名義変更型

業務委託型と違い、賃貸借の名義を新経営者に替える方法です。

つまり名義変更です。そうならば単なる書類上の話だと思われるかもしれませんが、今回のテーマは事業継承なので話は違います。

名義変更とは対大家さんとの関係であって事業承継をする当事者間では、一般的には金銭を伴った営業譲渡ということになります。

では相場はいくら位なのかということになりますが、これはあってないに等しく当事者間で決めるものです。

例えば、現経営者が営業権を渡す代わりに老後の資金として200万円欲しいと言ったとします。新経営者は、設備も厨房機器もお客様も含めてその額で引き継げるのであれば安いと思うのか高いと思うのかが判断基準です。

この名義変更型、一般的に屋号が変わらない場合が多いようですが、タイミングをみて屋号を変えられる方も多く見受けられます。

M&Aにより事業承継

一定規模以上の飲食店経営会社では、今M&Aで規模を拡大する手法が大流行です。

これまでチェーン展開と言えば、同一形態で全国何百店舗というように数で覇権を競ってきました。ところが、消費者の飲食に対する嗜好の変化がこのところ早く、今流行っているメニューが来年には見向きもされなくなるといったことは日常茶飯事です。

これに対抗すべく飲食店業界はいくつもの業態を持ち、人気の翳った店舗はすぐに新しい業態にリニューアルする方式に変更し始めています。そこで成長のスピードアップとノウハウを手に入れる為にはM&Aという方式が手っ取り早いとなった訳です。

これまでM&Aは複数店舗を持つ会社が会社ごとや同一ブランドだけの切り売りというのが一般的でしたが、大手カレーチェーンの様に一店舗からでもM&Aで組み入れて行くと発表しています。

つまり今後は個人店、中小店舗もその対象となりうるということです。また、こういった企業譲渡を仲介する会社も最近増えています。

事業譲渡断念なら居抜き店舗譲渡を検討

個人であれ企業であれ事業承継を受けてくれる相手が見つからないという場合も当然あります。

となれば、単純に辞めてしまうこととなります。この場合、借りている店舗の原状回復工事や解約予告期間の賃料支払いなど沢山のお金が出て行くことになります。

これらの支出を抑えるため、閉店を前提に造作の売却という選択肢もあります。

仮にお店を引き継いでくれる方が現れれば、最低でも原状回復費の出費はおさえられますし、解約予告期間も気にせずお店を明け渡すことができます。

もし、お店を構えている場所が人通りの多い場所であれば、造作譲渡費などの名目で新経営者から数十万から数百万もの譲渡金を受け取ることもあります。こちらも居抜き店舗を扱うプロに相談されることをお薦めします。

~まとめ~

令和2年に入り猛威を振るったコロナウイルス。都内の飲食店業界では意外な状況を生み出しています。その理由は営業時間を短くする代わりに各自治体から支給された時短協力金や持続化給付金の存在でした。

それまで、経営者の年齢や後継者のことを考え、閉店を考えていた飲食店が、それらのお金を手にすることで一旦活動をやめしまったのです。

令和5年に入りコロナに関する協力金や給付金がすべてなくなり、この3月、4月は一気に事業承継に向け動き始めています。

一方で、開業を支援する融資で頼れる日本政策金融公庫はこの事業承継を後押しする取り組みに力を入れています。事業承継の方法を教えてくれるセミナーの開催や個別の相談にも応じてくれます。当然ですが、事業承継に関し、発生する税金や事業承継資金なども融資に応じてくれます。事業承継が気になった時は最初にここを訪ねるのが一番賢い方法だと思います。

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