飲食店の物件を見て、「ガスメーターが付いている」「水道も電気も来ている」と安心していませんか。

設備は、単に“あるか、ないか”だけでは判断できません。開業する業種、使用する厨房機器、ピーク時の使い方に対して、必要な量を供給できるかが重要です。

特に10~15坪の小規模店では、設備を置く場所も工事予算も限られます。契約後に容量不足が分かると、追加工事費だけでなく、開業が数週間から数か月遅れることもあります。

以前の記事「実例でわかる【飲食店開業】ガス設備の考え方からチェック・容量アップ方法まで徹底解説」では、ガスメーターと配管の考え方を紹介しました。今回はそこから範囲を広げ、ガス・水道・電気・排気で起きやすい失敗を、10~15坪の飲食店向けにまとめます。

同じ10坪でも、必要な設備容量は業種で変わる

店舗面積が同じでも、必要なガス、水道、電気、排気の容量は同じではありません。判断の出発点は坪数ではなく、「何を、どの機器で、ピーク時にどれだけ同時調理するか」です。

業種特に確認したい設備
寿司・小料理給湯器、食器洗浄機、炊飯器などの同時使用。火力が小さくても、お湯の使用量が多い場合がある
食堂・居酒屋コンロ、フライヤー、焼き台、炊飯器、給湯器がランチや夕食時に集中する
イタリアンレンジ、オーブン、給湯器、食器洗浄機に加え、厨房の排熱と排気も確認する
焼肉各テーブルの熱源と排気を合算する。排気量だけでなく、同じ量の空気をどこから入れるかが重要
蕎麦・うどんゆで麺器、給湯、冷却、洗浄が重なり、ガスと瞬間的な給水量の両方が必要になる
中華中華レンジ、ゆで麺器、フライヤー、給湯器などが同時に稼働しやすく、ガス・水道・排気の負荷が大きい

「前の店も飲食店だったから大丈夫」ではなく、自分のメニューと機器表を使って確認する必要があります。

よくある失敗1 メーターの号数だけでガス不足と決めつける

ガスメーターが小さいと、すぐに「この物件では開業できない」「道路からガス管を引き直すしかない」と考えがちです。しかし、メーターの号数だけでは判断できません。

確認したいのは、次の3点です。

  1. 導入するガス機器の消費量の総和
  2. ピーク時に同時使用する機器
  3. メーターまで来ている供給側配管と、メーターから厨房までの配管の口径・経路

供給側の配管に余裕があれば、ガスメーターの交換などで容量を上げられる場合があります。反対に、大きなメーターが付いていても、配管条件や供給圧力などによって希望する機器を使用できない場合があります。

現地ではメーターの写真だけを撮るのではなく、配管の太さと経路も設備業者やガス事業者に確認しましょう。

飲食店のガスメーターと供給配管の太さを確認する設備担当者
ガス容量はメーターの号数だけでなく、供給配管の口径や経路も確認する。

よくある失敗2 ガス工事を契約後に検討する

容量アップに本管や引込管、建物内配管の工事が必要になると、すぐに着工できるとは限りません。現場条件、道路工事、申請、工事会社の混雑などにより、実務上は1~3か月程度かかることもあります。

内装工事が終わっていても、ガスが使えなければ営業はできません。物件を契約してから初めて問い合わせるのではなく、厨房機器の候補が決まった段階で、次の点を確認します。

  • 希望容量に変更できるか
  • どこまでの工事が必要か
  • 費用は貸主と借主のどちらが負担するか
  • 申請から使用開始までどれくらいかかるか
  • 工事日が開業予定日に間に合うか

「容量を上げられる」と「予定日までに使える」は別の問題です。

よくある失敗3 水道は蛇口から水が出れば十分だと思う

水道も、業種によって必要な瞬間流量が異なります。

蕎麦、うどん、中華などでは、ゆで麺器への給水、食材の冷却、鍋や食器の洗浄、給湯器への給水が重なります。10~15坪の店舗でも、25mmを一つの実務上の目安として検討することがあります。

ただし、「この業種なら必ず25mm」「25mmなら必ず足りる」とは限りません。水道の口径は、使用する器具数、同時使用水量、建物の水圧、店舗の階数、配管距離などを基に計算します。

既存メーターの交換だけで済まず、給水管の改修や水道局への申請が必要になれば時間も費用もかかります。排水能力、グリストラップ、給湯能力も同時に確認してください。

よくある失敗4 電気機器の定格容量を全部足して過剰設備にする

電気容量を考えるとき、すべての機器に書かれた定格消費電力を単純に合計し、その数字のまま契約容量や受電設備を決めると、過剰設備になることがあります。

必要なのは、店が最も忙しい時間帯に「どの機器が、どの運転状態で、同時に動くか」を整理することです。冷蔵庫、製氷機、食器洗浄機、電子レンジ、エアコン、照明などを、通常運転とピーク時に分けて考えます。

一方で、モーターやコンプレッサーの始動電流を無視すると、営業中にブレーカーが落ちる可能性があります。単相100V・200V、三相200Vの区分、回路ごとの負荷、将来追加する機器も含め、電気工事業者に最大同時使用電力を計算してもらいましょう。

大きければ安心とは限りません。必要以上の設備工事と基本料金を避けながら、営業中に落ちない容量を選ぶことが大切です。

よくある失敗5 排気ファンだけを強くしてOAを忘れる

煙やにおいを外へ出そうとして、大きな排気ファンを付けることばかり考えていませんか。

排気した空気と同じだけ、店内には新しい空気を入れる必要があります。この外から取り入れる空気がOA(Outside Air・外気)です。

給気が不足すると店内が強い負圧になり、次のような問題が起こります。

  • 入口ドアが重くて開けにくい
  • ドアや隙間から風切り音がする
  • 他区画や排水口からにおいを引き込む
  • フードが煙をうまく捕集できない
  • ガス機器の燃焼に必要な空気が不足する

給気口は、大きさだけでなく位置も重要です。給気がコンロの炎や立ち上る煙に直接当たると、煙をフードの外へ押し出すことがあります。排気量、給気量、給気口の位置、空気の通り道を一つの計画として考えてください。

ガス機器を使用する厨房では、一酸化炭素中毒を防ぐためにも給気と排気の確認が欠かせません。

小規模飲食店の厨房で排気とOA給気の風量を測定する設備担当者
排気量だけでなく、OA給気の量と位置を含めて厨房の空気の流れを設計する。

物件の申込前に行う7つの設備チェック

  1. 提供するメニューと調理工程を決める
  2. 導入予定機器の型番、熱源、定格入力を一覧にする
  3. ランチや夜のピーク時に同時使用する機器を整理する
  4. ガスメーター、配管、水道メーター、分電盤、空調、フード、給気口を撮影する
  5. 貸主や管理会社から設備図面と過去の工事履歴を入手する
  6. ガス、水道、電気、換気の専門業者に変更可否、費用、工期を確認する
  7. 貸主負担・借主負担と、工事承諾の条件を書面で確認する

設備確認は、厨房機器を注文した後では遅い場合があります。可能であれば、物件の申込前、遅くとも契約条件を確定する前に行いましょう。

まとめ 設備は「現在の数字」ではなく「営業時の使い方」で判断する

10~15坪の飲食店では、限られた面積と予算を有効に使う必要があります。

ガスはメーターだけでなく供給配管まで見る。水道は業種と同時使用量から考える。電気は単純な定格容量の合計ではなく、ピーク時の使い方を計算する。排気はOAを含めて設計する。

この4点を契約前に確認すれば、「工事が間に合わない」「追加費用で予算を超えた」「開業後に設備が止まる」といった失敗を減らせます。

物件の広さや見た目だけで決めず、メニュー、厨房機器、営業方法から必要設備を逆算してください。

※設備容量や工事可否は、地域、建物、供給事業者、使用機器によって異なります。最終判断はガス事業者、指定給水装置工事事業者、電気工事業者、換気設備業者、所轄行政機関等へご確認ください。

参考資料