さて問題です。次の単語に共通する飲食業態は何でしょうか?
「犬、猫、ふくろう、モルモット」
正解は「カフェ」です。
カフェと言えば、フランスやイタリアなど海外からもたらされた文化の一つです。本国では、エスプレッソを飲み、新聞を読み、語らい、情報交換の場として今もその文化は受け継がれています。
最近の日本では、サブカルチャーや癒しと結びついてメイドカフェやサブカルカフェ といった独自の発展を遂げています。
とりわけ「萌え」と言う流行語を発信するメイドカフェは秋葉原を中心に世界が知るところとなり、クールジャパンの大事なコンテンツの一部になっています。海外までも魅了する日本の カフェ文化、その進化と深淵を覗いてみたいと思います。
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日本におけるカフェの意外な原点
1911年、銀座8丁目がまだ京橋区日吉町と呼ばれていたころ並木通りに面した カフェ ー・プランタンは日本初の「カフェー」としてオープンしました。そもそも画壇のサロンの様な目的でスタートしたようですが、コーヒーに洋酒がメインで食事は焼きサンドイッチを出すなど当時の先端を行くお店だったようです。
その後「 カフェ ー」を冠する店が増えブームとなって行きます。ところが、昭和に入るころからそのサービス内容が変わり始め、現在のナイトクラブやバーのように派手な衣装の女性(ウェイトレス)が客の隣に座りホステスさながらのサービス業態へと変化していったのです。
その結果カフェーは本来の意味合いから遠くかけ離れた風俗として今なお風営法にその名をとどめるに至ったのです。
「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」
第ニ条この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
ニ、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業
カフェと喫茶店の違いについて納得の解説
普段何気なく使っているカフェと喫茶店という言葉ですが、この違いについて考えてみたいと思います。二つのイメージを文章化するとこうです、
- カフェ:明るい店内にミルクをたっぷり入れた カフェラテなどを出す若い女性に人気のあるお店。
- 喫茶店:少し照明を暗くした店内にしっかりとしたカウンターがあり、ゆったりと会話や静かに読書が出来る空間で、サイホンやドリップで淹れたコーヒーを提供してくれるお店。
実際に、どのように区別しているのでしょうか?答えは保健所の営業許可基準にありました。
食品衛生法施行令の第35条(営業の指定)に以下のように規定されています。
第三十五条 法第五十一条 の規定により都道府県が施設についての基準を定めるべき営業は、次のとおりとする。
一 飲食店営業(一般食堂、料理店、すし屋、そば屋、旅館、仕出し屋、弁当屋、レストラン、 カフエー、バー、キヤバレーその他食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業をいい、次号に該当する営業を除く。)
二 喫茶店営業(喫茶店、サロンその他設備を設けて酒類以外の飲物又は茶菓を客に飲食させる営業をいう。)
カフェ=飲食店営業、喫茶店=喫茶店営業と規定されています。では具体的に何が違うのでしょうか?
飲食店営業は、「食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業」とあります。カフェとはレストランや食堂と同じ扱いなのです。一方喫茶店は、「酒類以外の飲物又は茶菓を客に飲食させる営業」とあります。
つまり、喫茶店はアルコールも食事も出してはいけないのです。でもですよ、喫茶店のモーニングやランチのカレーやピラフは定番ですよね?これはいったいどうなっているのか誰しも疑問に思うところです。
このカラクリはこうです。お店の名前は「喫茶店○○」という看板を出していても、モーニングやランチを出すお店は、保健所に第一条の「飲食店業」として届け出をしているのです。届出さえちゃんと出していれば名称は関係ないということです。
日本が誇る2つの進化系カフェがもたらすもの”これまで”と”これから”
近年池袋にカフェの集積が見られます。2000年ごろの中目黒、恵比寿に到来した カフェ ブームとの違いは、前者が「空間や場所を提供する」ことを主な目的にしていたのに比べ、昨今は、「新しい料理の提案や趣味や嗜好を満たす癒しの提供」が大部分というところに大きな違いがあります。
なぜこのようになったのでしょうか?いくつかの要因があります。
これまで定番だった1階や2階の店舗は賃料の高さゆえ、コーヒーだけではやって行けなくなっていたのです。コーヒー一杯で長時間話し込むカップルに、文庫本を読みふけるお一人様。これでは家賃も人件費もまかなえません。必然的に家賃の比較的安い上層階に立地を求めることとなるのですが、当然視認性が悪く通りすがりの人がちょっと寄っていこうとはなりません。
だからこそお客様には目的をもってお店を目指してきてもらう必要があります。その仕掛けが犬であり、猫であり、フクロウであり、メイドなのです。癒しという嗜好を前面に押し出した「イベント型カフェ」 なのです。
もう一つの流れが料理です。クレープやフレンチトーストに果物や生クリームをふんだんに盛り付けるスタイルはこれまでのフレンチやイタリアンといったカテゴリーに収まらなくなってきました。
これらのスイーツ系料理を提供する店を カフェという名前でひとくくりにする傾向があります。イベント型カフェに対し「グルメ型カフェ」の存在です。
どちらのカフェもしっかりとした料理を出す飲食店に比べガス容量が小さくても問題なく営業出来る為家庭用のガス容量で十分です。もしガスが来ていなくてもIHのような電気調理器でも料理ができる為、オフィスビルの上層階での営業を可能にしたのです。
この二つの流れに共通するのは、「客単価のアップ」を可能にしたことです。
かつてのようにコーヒー一杯で粘る客がくるカフェも、イベントや利益率の高い料理が話題となれば、当然一人当たりの客単価はアップします。これまで採算が取れなかったカフェ業界も上層階の安い賃料と相まって生き残りの道を見つけ出したと言えるでしょう。
~まとめ~ さらなる進化を遂げるカフェの今後
趣味と料理の二極化の流れは基本変わらないと思いますが、本屋とのコラボや絵や写真といった文化とのコラボも増えることでしょう。
少し変わったところでは、大学の近くに企業の会社説明や就職相談ができるカフェが増えています。優秀な就活生に入社して欲しい企業と就職先を探す大学生のニーズを引き合わせた業態です。
同様に、ファミレスやカフェが自習室代わりの状況を見れば、宿題カフェや自習室カフェと銘打って現役東大生がアドバイスしてくれるようなカフェがあってもいいように思います。
社会人にとってはサテライトオフィス代わりに、仕事ができるサテライトカフェなどもウイズコロナ、アフターコロナの時代にあっては十分なニーズが見込めることでしょう。
カフェを構成する要因を見てみれば、「くつろぎ」+「目的(癒し、料理等)」、そこに「 カフェという飲み物」が提供される「場所」で成り立っており、まだまだ可能性は尽きない業態のひとつだと言えそうです。