どのような事業であれ、飲食店も含め納税の義務はあります、利益を出した分、納税するのは国民の義務です。
そこでこれから飲食店で開業しようとお考えの皆さんへ、「青色申告」と「白色申告」の違いとそれぞれのメリットについて解説いたします。どちらを選ぶのかこちらをお読みになってから決めてください。
今回は、飲食店が納税するための確定申告についてお伝えいたします
Contents
~はじめに~飲食店の確定申告方法について
飲食店を始めるということは事業者になるということです。当然年度末には確定申告をしなければならないということを覚えておいてください。
また、それには二つの選択肢があってどちらを選択するかで納める税金に大きな違いが生まれることも今回知って頂きたいと思います。
「青色申告」と「白色申告」。名前だけは聞いたことがあると思います。実際に違いはなにか、納める税金に差が生まれるのか、どこへ行けば申請できるのか、つぶさに見て比較したいと思います。
確定申告青色と白色の2つが存在する理由
個人、法人を問わず事業を行う者は確定申告 が義務付けられています。また、申告方法には2種類の申告方式が存在することをお話しました。このことを説明するには、ある想定の下に使い勝手や税金が意図せず増えないよう考えられているところからスタートします。
タイプ①
最近では個人で手軽に起業する在宅ワーカーが増えています。高い技術力や専門知識によりPCだけで生計を立てる人たちです。彼らの様に商品の仕入れがなかったり経費があまりかからない事業者には、記帳方法を出来るだけ簡素化して納税できるように考えられています。
タイプ②
飲食店 の開業や物販店のように設備投資や人を雇って商売をする事業者には、より細かくお金の出入りを記録し税制上の優遇が受けられるよう考えられています。
つまり、前者①を「白色」、後者②を「青色」と区別し申告の方法を分けているのです。
飲食店で確定申告をする場合どちらが節税となるのか
最初に結論を言います。 飲食店舗の経営者は「青色」申告を選択しましょう。
飲食店開業時の手続きは?
青色申告での申告を選択する場合、まず店舗がある所轄の税務署に行き、「青色申告承認申請書」を提出します。尚、白色申告の場合は、最初に特別な手続きは必要ありません。
青色の確定申告メリットの違いについて(白色との比較)
白色申告との違いで比較をしながらそのメリットについて確認します。
①記帳方法により控除額が異なる
- 青色 65万円控除(複式簿記の場合)
- 白色 10万円控除(単式簿記の場合)
②専従者給与の経費の扱いが異なる
- 青色 金額の制限はありません。
- 白色 配偶者86万円まで、その他50万円までとなります。
③損失の繰越で異なる
- 青色 損失を3年間にわたって繰越できます。
- 白色 原則その事業年度限りで終了です。
飲食店青色申告のメリットの詳細をみる
①記帳方法によるり控除額が異なる
まず、①の記帳方法による控除額についてですが、青色では記帳(複式簿記)が義務付けられています。そのかわり、年間65万円の控除が受けられます。
白色でも複式簿記を記帳すれば同様の控除が受けられますが、そもそも白色を選ぶ時点で記帳の簡単な単式簿記を選ばれるはずですのでこの場合は控除額が10万円となります。
この控除についてですが、税額から引く言うことではなく、所得の額から予め引いていいですよという額です。仮に事業年度で300万円の利益があった場合で見てみましょう。
300万円-65万円(控除額)=235万円(課税対象額)
納税する場合、300万円ではなく 235万円に対し税率を適用し納税額を算出していいですよとなります。
②専従者給与の経費の扱いが可能
金額に制限のない青色に比べて、白色でも結構控除額があるように見えます。このれをもう少し砕いて考えてみます。
配偶者つまり奥様が一緒に働く場合の経費年間86万円を12ヶ月で割ると「月額7万1600円」です。その他の家族の場合では年額50万円までの控除となっており、月額に換算すると4万1600円ということでアルバイト並みの金額しか認められないこととなります。奥さんであれ家族であれ働いた分を経費として利益から差し引くこと考えるならやはり青色を選択するということになります。
③損失の繰越は出来る
今回の比較で最も重要なポイントがここにあります。 飲食店舗を開業する場合、居抜き店舗であろうとスケルトンから造り込むのであろうと100万円~1,000万円もの工事、厨房機器費用がかかります。
仮に初期投資の部分に500万円をかけたとしましょう。その事業年度に頑張って100万円の利益を出したとしても差し引き400万円の赤字です。従ってその事業年度の税金は0円です。
「白色」の場合どれだけ損失を出しても、その年度の1回のみで控除は終わりですから、2年目からは控除は「0円」となります。
青色は違います。翌年、翌々年に開業時に引ききれなかった400万円の赤字を繰り越すことが認められているのです。
仮に2年目はもっと頑張って200万円の利益が出たとしても、200万円-400万円でまだ初年度の赤字の200万が引き切れていません。
もちろん2年目の税金も0円です。さらに、3年目に残った200万円分を利益から控除できるという仕組みです。
もし売上が2年目と同じ200万円なら3年目も税金も0円となります。こちらもメリットで青色に軍配が上がります。それにしても大きなメリットです。
~まとめ~飲食店の確定申告は「青色申告」か「白色申告」そのメリットと違いで判断する
開業をして青色申告の承認を受けるには、「2ヶ月以内」に所轄の税務署に行き青色申告承認申請書を出す必要があります。
これをおこたると、確定申告の時期になってどんなに慌てても、白色扱いとなります。その後青色に変更することは可能ですが、次の事業年度からになります。その代償は大きく、損失の繰延が適用できたのにたった1年の控除のみとなりその後の繰延が出来なくなります。
まだあります。
折角働いて得た利益が税金として消えるだけではありません。所得が増える分「住民税」や「国民健康保険」の金額にも影響しますから徴収額が高くなってしまいダブルパンチです。
余談ですが、令和2年初めからのコロナウイルス禍で売り上げが一定以上下がった飲食店に持続化給付金が出ました。こちらは前年度同月比でしたが、令和2年になってから開業された飲食店もその後対象となりました。そこで給付金を受けられる条件に税務署への承認申請書の有無が大きくかかわっていました。この先も何が起こるかわからない中で言えば、必ず早い段階で税務署を訪ねて申請を済ませておかれることをお勧めします。
~まとめ~
申告だとか簿記だとかその言葉を聞いただけで拒否反応を示される方がいます。そうもいってられない程のメリットに気づかれたと思います。
それでも面倒だと思ったら、放置しないで自分一人で悩まず、飲食店専門に記帳サービスを受けてくれる会計事務所をネットで探しましょう。必ずよいアドバイスや手続きを代行してくれます。
また、タブレットを使用したクラウド型のレジを使えば帳簿の販売の部分は自動で記録、仕訳をしてくれます。
パソコンが使える方なら会計ソフトがいくつも出ており以前に比べて随分と負担は軽くなっています。
何度も言いますが最初(開業時)が肝心です。
面倒がらずにまずは税務署へは必ず行き、その後は記帳と仕訳、領収書の管理を必ずやりましょう。この一連の作業でいざという時の給付金などの支給が受けられる事業者と認められるのです。