飲食店を開業される方で最初から廃業を前提に始める方などいません。とは言え飲食店を始めた方で2年以上お店が続く割合は半分以下だとも言います。
少なくとも自分は大丈夫だろうといっても確率論から言えば無視できない割合です。ただそうならないまでも最初に手を打っておくということは出来ます。
つまり保険のようなものです。後から知ってそんなことならやっておくべきだったと思っても後の祭りです。
今回は、無いに越したことのないのですが、まさかの廃業時に少しでもソフトランディングが出来るような開業時の工夫と廃業となってしまった時に打つ手を考えてみたいと思います。
これさえ手を打っておけば一度は廃業したものの数年後再起を果たすことも可能となります。現に一度は廃業したものの今や盛業となっておられる飲食店経営者の方が沢山いらっしゃいます。
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飲食店舗を手放す時の為にある取り決めを書面で残す
最近は飲食店を居抜き物件で始められる方が随分と増えました。時代の流れではありますが、個人で飲食店を始めるにあたり何も無い状態から作り上げるのはお金がかかります。
また大家さんにとってもスケルトン(何も無い状態の貸室のこと)で貸し出してもなかなか借手がつかないため割り切って原状回復工事をせずに造作や設備、厨房機器などの残置を認めるようになってきたも背景にあります。
ただ、居抜きで店舗を借りたのだから返す時も居抜きで構わないだろうと考えるのは早計です。
賃貸借契約書には原状回復工事をして返すよう必ず条項が盛り込まれています。これはどういうことかと言えば、前の賃借人から原状回復義務を引き継いだという理解になります。ですので何も確認しなければ最悪原状回復工事をして返すことになります。
一番いいのは契約書に「乙(賃借人)は甲(大家さん)の承諾があれば設備造作を残置することが出来る」などの文言を入れて頂きましょう。
もしくは、残置ではなく「甲の承諾があれば、甲の認めた第三者に原状回復工事義務を引き継ぐことが出来る」と入れて頂くのもいいでしょう。口約束はトラブルのもとです、必ず書面にして残しましょう。
居抜きで店舗を売る時の為にやっておくべきこと
借りた不動産を大家さんに返却する場合本来はお金をかけて原状回復工事をするのですから金銭的負担は相当なものになります。坪当たり10万円かかることも珍しくありません。
その点第三者に造作・設備一式を売却が出来るのであれば逆に手元にお金が残ることになり、預けてある敷金も原状回復工事費として使うことなく帰ってきます。いいことずくめの様に思いますがいくつかの落とし穴があります。
先ず、設備や厨房機器などをリースで導入すると2年やそこらだと残債が残っていることがほとんどです。もしこれを払えないとリース会社は店舗内からすべて引き上げて行きます。
よく目にする光景では、天井に付いていた空調機が無くなりぽっかりと穴が開いている状態になっていることや厨房内のコールドテーブル、4ドア冷凍冷蔵庫が全て持ち出されていて厨房の機能が失われていることがあります。それだけならよいのですが、大型の冷凍冷蔵庫を運び出すにあたりカウンターを壊して持ち出すこともあります。
こうなると売るとか売れるとか言う次元ではなくなります。リースは最小限に抑えるか全く組まないで買ってそろえた方が後のことを考えると得策なのです。
でも、手元に買うお金が無いからリースを組まざるを得ないと言われるかもしれません。そんな方には、次のチャプターで詳しくご説明申し上げます。
リースを組まない為に
簡単に言ってしまえばお金を借りるのです。お金を借りる、借金をすることに抵抗のある方はよく読んで下さい。
- 日本政策金融公庫 2.41% ~ 2.90% (無担保・無保証)基準金利
- リース金利 5% ~ 8%
お金を借りるのもリースをするのも実は同じことなのです。なのにリースの方が金利が高いのは納得いかないと思いますが、同じ金額を金利返済とリース料金での返済を比べた場合多く払うのは間違いなくリースの方です。
その上残債があれば物がなくなると言う事態になります。もし、公庫でお金を借りてすべてを揃えたのであれば店舗内の造作や設備、厨房機器を売ったお金で返済が出来ます。さてどちらを選びますかと聞くまでもないと思います。
どうしたら設備資金が借りられるのかに答える
ではどのようにしてお金を借りてくるのかと言うと金融機関の貸し出しに関する考え方を知る必要があります。例えば日本政策金融公庫の場合はこうです。
公庫が貸し付けをする対象は大きく2つに分かれます。
- 設備投資
- 運転資金
このうち対象物がハッキリしている設備資金には高額でもお金を貸し付けてくれます。それに対し運転資金の方はと言うとあまり多くのお金は貸してもらえません。それは貸し付ける対象物がなく悪い言い方をするとお金を借りた人の生活費となってしまうかもしれないからです。
2024年10月現在であれば、自己資金は借入額の10%以上用意できれば貸し付けてくれます。つまり手元に100万円の自己資金があれば900万円まで融資が受けられると言うことです。
居抜き店舗物件で開業をするならそこまでの資金は必要ありません。
例えば、内装の手直しや空調機などの設備、厨房機器などを揃えてもせいぜい500万円も借りられればお釣りが来ます。プラス運転資金として借りられるだけ借りておけば、自己資金200万円はもしもの時の運転資金として手元に置いておくことが出来ます。お守りのようなお金です。
理屈では分かっていても借金をすることが嫌だからと、手元のお金を使って工事をし機器をそろえる為にお金に使ってしまい、足りない分はリースを組んで、それからようやく運転資金の一部を公庫から借りると言う方が多いのも事実です。そうなるとどこまで貸してくれるかは事業計画書次第となり思ったほど融資が下りなかったという話をよく耳にします。その理由はリースの分が引かれたからです。
~まとめ~
もし飲食店の経営が上手くいかなくなって閉店、廃業ということになってもスタート時に手が打ってあればお金が手元に残る確率はグンと増します。そのお金を借入返済の原資にもできますしそこからまた貯金を始め数年後には再起をするための拠りどころにもなります。すべて失い借金やリースの返済だけが残るのではあまりにも残念です。
冒頭でも書きましたが、開業時の借入金の考え方は保険のようなものです。ともかく開業時の考え方ひとつで未来は変わります。