中古車を買取り会社に持ち込むような場合、汚れたままの状態で乗りつけるよりも、洗車をして持ち込んだ方が売却価格が上がるのではと人は考えるものです。
実際、水洗いをしてワックスがかかっていた方が輝いて見えます。車内も埃だらけのシートより掃除機をかけた方が清潔感が出ます。当然査定する側も機能の評価以外の部分では価格がプラスに加算されます。実は居抜きで取引される飲食店舗も同じことが言えます。
車と違うところで言えば、不動産ですから動きません。当然その店舗の立地が大きく価格を左右するわけですが、立地、設備等が同じであった場合に清掃をすることで売買価格がプラスになるポイントがあるのをご存知でしょうか。
今回は価格アップにつながる3つのポイントについて考えてみたいと思います。
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飲食店を居抜きで売却する大前提がある
飲食店を閉店する際に原状回復工事を行わずに次の方にお店を引き継ぐ方法があります。このことを不動産業界では「居抜き」と呼ぶのですが、以前はそのままの状態で引き継ぐことを「残置」と呼んでいたのですが、昨今は、造作売買だとか店舗資産売買と呼ばれる金銭の授受が伴うことが増え、「居抜き」という表現にかわってきました。どちらも原状回復義務を履行せずに次の方に内装を引き継ぐわけですから必ず大家さんの承諾が必要になります。
いくら本人たち同士で譲渡の話がついていても大家さんの承諾がない限り引継ぎは出来ません。たとえ、他所では認められることがどうしてウチの大家さんは認めてくれないのか?と憤ってもはじまりません。あくまでも契約書に書かれている内容が絶対で、そこを曲げてお願いするのですから礼を尽くしてお願いをする必要があります。
大手不動産管理会社が窓口の場合、大家さんに会う前に門前払いをされたというお話も数多く聞きます。こういうときほど日頃のお付き合いがものを言います。まめにご挨拶するようにしましょう。
それでも大家さんの承諾が得られなければ原状回復費用を負担してスケルトン工事をすることになりますが、首尾よく売却できれば手許に売却金額が残ることになります。閉店をされる方からすればとても魅力ある方法です。まずはこの大前提をクリアしてください。
売却金額アップポイント①「臭気」
営業をしている飲食店にお邪魔しても料理を作っていますので、胃袋を刺激するいい匂いしかしないのですが、営業していない飲食店舗では飲食店独特の臭いがするものです。
人によって表現は違いますが、酸っぱいような臭い、生臭い臭い、よどんだ水の臭い等々。ほぼこれらの元凶は厨房の排水溝、グリストラップ、排水枡が原因です。この臭気が出ていることで分かることがあります。それは普段から厨房の床や側溝の清掃を怠っていることやグリストラップも頻繁に清掃していないということです。
この臭いは、「排水管の詰りリスクが高い」と言うことになります。次の方が開店早々に排水管の詰りを起こしてお店の営業を中断せざるを得なくなることも十分考えられます。
つまりこの臭いが無ければ排水管の洗浄費用分は確実に上乗せできます。
同様に臭気で言えばトイレです。トイレの臭気は結構厄介なものです。便座には下水管の臭気をせき止めるトラップという機能が備わっているのですが、そこに尿石などが付着していて、いくら掃除をしても臭いが取れなくなっている可能性があります。こうなると見た目がきれいでも評価はできません。
同様に、壁や床の目地に臭いの元が染み込んでいることも十分考えられます。もしこの状態で売却査定をするとトイレの便座を交換する費用が余計に掛かると買手は考えるものです。これを除去するには市販の塩素系洗剤では太刀打ちできません。業務用の尿石除去剤を使用するしかないのです。最近ではネットですぐに見つかります。
これでトイレの臭気を断ち切れば改修費用分は上乗せ評価です。
売却金額アップポイント②「害虫駆除」
殺虫殺鼠(さっちゅうさっそ)と言う言葉を聞いたことがあるでしょうか。不動産用語でゴキブリ、ネズミの駆除を指すものです。
オフィスビルなどは年に1回必ずこの害虫駆除を義務付ける大家さんが多いのに対し、飲食店でそこまでの要求をされている大家さんはほぼ皆無です。
その結果、コールドテーブルの下にゴキブリの捕獲器を置いたり、ネズミ駆除の為に通称毒団子と呼ばれる駆除剤を置いている飲食店を見かけることがあります。このような飲食店は、お店を営業している間はあまり目立たないのですが、営業を終了し厨房機器の下部やシンクの下部、食器棚の上部など普段人目に触れない場所に数多くの糞や死骸があることがほとんどです。
つまり大掛かりな清掃を行わないと営業が再開できないことが考えられます。そうなると次に飲食店を引き継いだ方はプロの清掃会社にお願いするなど大きな出費を覚悟しなければなりません。これでは売却価格を上げるポイントの前に大幅な減額要素となります。
売却金額アップポイント③「見た目」
人は見た目が100%というドラマがありましたが、飲食店の居抜き店舗も同様です。汚れた床は綺麗な方がいいですし、磨けば光る厨房機器の扉の汚れ、コンロ上部にあるスチール製のダクトフード、一番汚れやすいコンロ廻りなど日々清掃を続けていれば清潔さを保てる箇所ばかりです。
主観ではありますがこの見た目の清掃に関して、お店の営業年数に関係なく磨き込まれた厨房というのは、同業の料理人からみればどんな仕事をしていたかわかると言います。
高額で取引される飲食店居抜き店舗とは、自分もここで料理をしてみたいと思わせるオーラの様なもを感じるといいます。つまりこの厨房であればお金を出してもいいと思わせる力があるということです。
だからこそ、閉店をするからと言って急に掃除を始めても長年磨き込まれた厨房には遠く及びませんが、少なくともやった方が絶対に金額は上がります。
まとめ
飲食店舗の売却価格に占める立地と設備と造作の割合をよく聞かれます。
冒頭では立地によりその価格が大きく変化すると書きましたが、駅前立地の様な1等地と呼ばれるようなところはほぼ100%立地の価格だと思って間違いありません。
ですから営業40年の老舗でも300万円を超える破格の値段がつくこともあるのです。逆に、1.5等値、2等値と駅から離れて行くほど設備や造作の価値割合が増えて行きます。住宅地や駅から10分も15分も離れた場所では、そこでお店をやりたい方がいらっしゃればいくらか値段は付くかもしれませんが、正直言って無償つまり原状回復工事をやらないで済ませられるだけでも十分ということになります。
昨今大家さんは、不動産事情を考え原状回復をした方が次が決まりやすいと考えるのかそのまま店舗として残置させた方がいいと考えるか迷われる場面もあろうかと思います。よく管理会社を交えて周辺事例を参考にしながら相談してお決めになることをおススメします。